2011年09月15日

【資料】David Bellos「A life in words」

資料として、まずはこの本あげなくてはいけないだろう。イギリスのペレック研究家David Bellosが書いた本。
写真にある通り、右が英語版、左がフランス語版となる。
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英語版(1993年)、フランス語版(1993年)ともに同時期に出版されたが、確か英語版のほうが早く出たのではないかと記憶する。しかしこれだけのボリュームのものが同時に出版されるというのは、ベロス自身が英語版と同時にフランス語版を自ら書いていたから。しかしそれにしてもこのボリュームの差はなんだろうか?
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それはともかく。この評伝の特徴は、もちろんベロス自身研究者としての成果でもあるのだが、何よりも多数引用されている聞き書きにその価値がある。生きている関係者にインタビューをし、そこから引用している。当然ながら作家自身が文字化しなかった情報や、作家自身によるというよりも、関係者による作家に関する貴重な情報が載っている。

一方では不安も残る。この「聞き書き」というのは、あくまでもベロスが聞いて、ベロスにとって有益な証言を掲載しているものであって、いまその資料がすべて公開されているかどうか定かではないが、もし第一次資料としてのこの「聞き書き」の総体を第三者が検証することができないとしたら、研究資料としては問題がないとは言えない。貴重な証言であると同時に、きわめて扱いにくい。

とくに現代作家の場合、関係者が生きているというのは、あらゆる意味で研究には有益なことだ。しかし、だからと言ってそのことは資料性に乏しい。私も、いくつかの点を関係者に直接聞いたことはあったが(ほかで述べる)、それはあくまでも研究の結果あってのことだ。

この仕事の評価が分かれるというのはとても頷ける。
例えばこんなエピソードがあった。

私は幸運にもフランス語版が発売された直後にフランスへいた。また、発売とほぼ同時期に、ポンピドゥーセンターで行われた座談会に立ち会うことができた。内容は、このベロスの本を巡ってだ。この会を主催したのは、たしかBeaumatin(若手の研究者)だったように思う。ステージ上で話をしていたのは、確かJacque Neefs、Pilippe Lejeune、そしてベロス、それとあともう一人だったように思う.あるいは、Neefsはいなかったかもしれない。

この会、蓋を開けてみると、なんとベロスに対する大批判大会だった。

この評伝には問題があった。多くの場所で引用されている彼が関係者におこなったインタビューである。当然ながら個人的な情報であるので、書かれては嫌がる人もいるだろう。おそらく了解をとって掲載はしているのだろうけど、膨大な数の引用にのぼるため、了承を完全に得ていなかったのではないか。もう1つは、あまりにも個人的な情報、とくに人間関係に関する記述が多く、作家ペレックのイメージを貶める危険性を十分にはらんでいた。私は、むしろ人間臭い部分がわかってなお好きにはなったが、当事者が存命で、その当事者がよかれと思って協力したところ思ってもみない記述になっていたとしたら、普通はいい気持ちはしないだろう。

おそらくは、このスタイル、当事者にインタビューをしてまとめるという方法はもしかするととてもイギリス的、アングロサクソン的なのかもしれない。また、私生活についてつまびらかに記述するのもイギリス的なのかもしれない。しかしフランス人には到底受け入れられない。ましてや当事者になればなるほど、そんな文化的な違いなど気にするまでもなく、癇に障る。

とくに攻撃がすごかったのが2番目のパートナー、Cathrinne Binetだ。一度、マイクを握ったら離さないとばかりに批判をしていた。その前、前方にはPaullette(最初の奥さん)が息子と座っているのである…。

「聞き書き」によって与えられた情報は大きい。またこの本に付された細かいインデックスもとても助かる。ただ、ところどころ資料的な間違いがあるのも事実だ。久しぶりに本を開くと、資料部分に大きく×のついた部分があった。どう間違っていたのかは、明記されていないが、おそらくは、年代のミスだろう。演劇作品に関する部分で本質的な部分ではないが、確かアヴィニヨンの演劇祭でペレックがテーマだったときのことが抜けているというぐらいのことだろう。定かではない(調べようにも、すでにこのことについて調べた資料が残っているかどうか…)。だから研究書の一つとして扱うときには、少々慎重になる必要があると思う。

そうしたことはさておき。これほどまでの評伝はなく、人間ペレックを知る上では貴重な本である。

posted by じん at 12:00| Comment(0) | 【資料】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月10日

2011年09月09日のつぶやき

jinyamada / jinyamada
昔の話も書いてみようと思います。例えば、「アレクサンドラの老い」とかについても!RT @akihirokubo: @jinyamada ペレックブログ見ましたよ! at 09/09 10:51

jinyamada / jinyamada
@tk67noel ありがとうございます。「53日」早く読みたいです!素数のなぞもそのうち書いてみたいと思います! at 09/09 09:54

jinyamada / jinyamada
@tk67noel あ、はい…。ちょっと始めてみようかと…。 at 09/09 09:45

jinyamada / jinyamada
@umemina Thanks ! 今後もご期待を! at 09/09 08:51

jinyamada / jinyamada
【ジョルジュペレック・ブログ】『【引用】Ali Magoudi「La Lettre fantôme」』ジョルジュ・ペレック探訪|http://t.co/G1MEmFZ at 09/09 01:34
posted by じん at 00:01| Comment(0) | 【引用】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月09日

【資料】『また君に恋をした』アンドレ・ゴルツ

これは、いささか間接的すぎるかもしれない。



2010年に水声社から発刊されたこの書籍。訳者から献本としていただいたのだが、そもそもこのアンドレ・ゴルツという名前に興味があった。ペレキアンなら、気にならないわけはないだろう。

彼の「モーリス・ナドーへの手紙」(『家出の道筋』水声社2011年、酒詰治男訳)にこうある。

これは「レ・タン・モデルヌ」誌に発表され、「老化」と題されていたアンドレ・ゴルツのテクストを書き変え、発展させた物語、あるいはより精確には一連のテクストです。(p.76)

じっさいに、「老化」を読んでみてもよくわからない。なんとなくこんな感じなのかもしれないというのは分かるが、違和感のようなものを感じる。そもそもなぜアンドレ・ゴルツだったのか。このあたりは、いくつか考えられる。一つは、ペレックが「レ・タン・モデルヌ」誌のいい読者だったこと。とくに、初期の彼の引用には、「レ・タン・モデルヌ」誌に発表された論文をもとにしているのではないかという部分が多くある(これは後に説明する)。

もう一つ。彼のフランス現代思想への関心である。その時代がどんな時代かは想像するしかないが、文学をやっているものにとって思想的な背景は一つの必要があったのではないか。例えば、ルカーチを読むペレック(ルカーチのフランス語訳はかなり後になって出版される)は、どこか本物っぽくない。また当時、高校の先生でもあったジャン・ドゥヴィニョー氏のおそらくは紹介と思われるポール・ヴィリリオとの親交などは、関心がなかったとは言いがたい。

かつてミカエル・フェリエ氏は、東京日仏学院で行ったペレックに関する講義のなかで、ペレックの『さまざまな空間』とドゥルーズのセリーとの類似を論じていた。

どこまでペレックは、ドゥルーズ、デリダといったフランス現代思想を知っていたのか、あるいは、知っていたとして、どの程度の影響を受けていたのだろうか。

さて、挙げた書籍の引用に移ろう。この本には、つぎのような行がある。

「老化」は僕の青春への決別、ドゥルーズ=ガタリが「欲望の無限性」と呼んだもの、そしてジョルジュ・バタイユが「汎可能性」と呼んだものとの決別となるものだった。これは「無」の意志と「全」の意志が混ざり合うという、いかなる定義によっても定義不可能な、拒否によって接近可能な概念である。(p.76)

同じ76ページであるのは、水声社が意図したのだろうか!
この1文を見つけた時、10年来の謎がとけたように思った。とくに後半の、無の意志、全の意志、拒否、接近可能、ペレックの作品に読むことのできるいくつかのキーワードではないか。しかもゴルツは、ドゥルーズ的なな世界、バタイユ的な世界を意識して、それに反するように「老化」を書いていたということだ(あくまでも回想なので、ほんとうにそうだったかはわからない)。

その「老化」を受け取ったペレック。しかも肯定的に受け取っているペレックには、意識として、こうした20世紀のフランス思想へのなんらかの関心からだったのではないかと思わせる(あくまでも思わせているのであって、定かではない)。

ゴルツを引用するペレックにどれだけの意図があったかはわからないが、当時の状況を少しだけ垣間みさせてくれる。
posted by じん at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 【資料】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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